数学的な文章の作法
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概要
理論物理学を学ぶ上で数学的な文章を見たり書いたりすることは多い.そこでここでは数学的な文章の作法を説明する.文章の善し悪しは時に意見の分かるところである.しかし,文章をより明確にするためのガイドラインはいくつか存在する.それらを紹介したい.なお基本的に論文は英語で書くことが多いので,英文に関するガイドラインを紹介するが,和文にも通ずる部分も多い.
以下に12のガイドラインを示す:
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文は数学記号ではなく単語で始める:英文は大文字で始まるが,数学記号は基本的に大文字と小文字は異なる概念として扱うため,数学記号を文頭に置くべきではない.
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文の最後にピリオドを付ける:数式は特殊な記号を含む英文とみなされ,通常の句読点を使用する.
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数学記号や式は単語で区切る:そうしないと,別々の表現が合体したように見え,,混乱の原因になる.
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記号の誤用を避ける:等号$=$などの数学記号は通常の言葉ではない.数式内で使用するのは適切であるが,通常の文章中で用いるのは不適切である.
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不必要な記号は使わない:数学は記号の多さで混乱する(記号がなくても十分混乱する).必要以上に記号を導入すべきではない.
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一人称複数を使う:数学の文章では「I」「you」「me」は使わず,「we」「us」といった単語を使う.書き手は読者に詳細を案内しているのである.
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能動態を使う:単なる提案だが,能動態は文章を簡潔にする.
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新しい記号について説明する:これを怠ると,曖昧さ,誤解,間違いにつながる.
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代名詞はなるべく避ける:代名詞は何を指しているのか不明確な場合に混乱を引き起こす.
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since, because, as, for, so:これらの単語は2つの文をつなぐ接続詞である.一方が真であり,その結果として他方も真である場合に用いる.
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thus, hence, therefore, consequently:これらの単語は文節から論理的に続く文節の前に置く副詞である.
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明瞭さは正義:以上のルールを破ることで文章が明瞭になると思うなら,ルールを破るべきである.
数学的な文章は使うたび上達する.良いスタイルを身に着ける方法の1つは,他人の数学的文章を読むことである.上手くいくものは取り入れ,そうでないものは避けるべきである.
参考文献
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Richard Hammack, Book of Proof, 2013