HEP-NOTE

弦理論の教科書

本稿では,弦理論の教科書を紹介する.

教科書

A First Course in String Theory

著者: Barton Zwiebach

出版年: 2004年

概要: 弦理論を学部生にも理解できるようにするという目的で書かれた教科書.超弦理論の主要な概念を具体的かつ物理的な方法で提示し,形式論よりも先に直感を養うことを目的とし,しばしば簡略化された例題を通して説明している.第二版では,AdS/CFT対応を含み,超弦論も導入している.本書は,数学と物理学のバックグラウンドを持つ学生を対象とした弦理論の入門コースに最適である.新たに加わったセクションでは,orbifold,cosmic string,moduli stabilization,landscapeをカバーする.約300の問題と練習問題を収録し,www.cambridge.org/zwiebachから講師用にパスワードで保護された解答が提供されている.

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String Theory

著者: David Tong

概要: Cambridge大学での講義録.bosonic弦理論と共形場理論(CFT)を扱っている.近年ゼミで用いられることが多いらしい(実際,私は初めにこれをゼミで読んだ).オンラインで無料公開されている[1]

リンク: David Tong - University of Cambridge

String Theory and M-Theory

著者: Katrin Becker, Melanie Becker, John H. Schwarz

出版年: 2007年

概要: この本は,弦理論の基礎から最近の発展まで書かれている.bosonic弦理論,共形場理論,超弦理論の基本を紹介した後,双対性,M理論,コンパクト化,AdS/CFTなどの最新の発展について解説する.Zwiebachよりは詳しく,PolchinskiやGSWよりは詳しくないが最新の内容を扱っている.解答付きの120以上の練習問題と,www.cambridge.org/9780521860697で公開されているパスワードで保護された解答付きの200以上の宿題が含まれている.

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String Theory (2 volumes)

著者: Joseph Polchinski

出版年: 1998年

概要: この2巻からなる本は,弦理論の包括的な説明を提供する.第1巻では,Polyakov経路積分と共形場理論に基づくbosonic弦の徹底的な紹介を行う.最初の4章では,弦理論の中心的な考え方,共形場理論の道具,Polyakov経路積分,弦の共変量子化を紹介している.本書は次に,弦の相互作用について,一般的な形式論と,treeレベルと1ループの振幅の詳細な扱いについて述べている.toroidalコンパクト化や,T-dualityやD-branesのような弦物理の多くの重要な側面も扱われ,様々な非摂動的な考え方も扱われている.巻末には,経路積分法についての簡単な講義と,注釈付き参考文献,詳細な用語解説が付録として付いている.

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Superstring Theory (2 volumes)

著者: Michael B. Green, John H. Schwarz, Edward Witten

出版年: 1987年

概要: このテーマが急速に進展していた時期に出版されたこれらの本は,学生や研究者の世代に大きな影響を与えた.その後,この分野では膨大な進歩があったが,これらの巻で示された超弦理論の基礎の体系的な解説は,最初に出版されたときと同様に,今日でも十分に通用するものである.第1巻は,超弦の初歩的な扱いから始まり,超対称性につながるフェルミオンの自由度,ゲージ相互作用につながる内部量子数など,追加的な自由度の組み込みについて述べている.また,tree近似散乱振幅の評価についての詳細な議論もなされている.本書は,一般相対性理論や素粒子論の大学院生や研究者にとって貴重なものである.第2巻は,one-loop振幅の評価,anomalyの研究,現象論に関するものである.低エネルギー有効場理論のanomalyの解析,ゲージ群$\mathrm{E}_8 \times \mathrm{E}_8$とSO(32)の出現,そして6つの余剰次元のコンパクト化によって生じる4次元の物理について考察している.

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脚注

  1. David Tongは弦理論だけではなく,学部レベルから大学院レベルまでのレクチャーノートを多数書いており,どれも読みやすい.